痛み止めを飲んでも痛みが止まらない理由
はじめに
バファリン、ロキソニン、カロナール…ワクチンの副反応対策としても、最近特に耳にする機会が多かった、いわゆる「痛み止め」のお薬。解熱作用もあるため、今回のようなアレルギー症状にも使われますし、日常の頭痛や腰痛などにも使われています。
しかし一方で、患者さんとの会話で「痛み止めを飲んでも痛みが止まらない」というお話を受けることがあります。薬の効果の説明というのは、ひじょぉ~に専門的で難しい話になりやすいのですが、今回は痛み止めの薬がどういうものなのか、どんな時に飲んだらいいのかを出来るだけ簡単に解説してみたいと思います。
そもそも痛み止めって飲んだ方が良いの?
痛みというのは、体の危険を脳に伝える信号の一つですが、強すぎたり、長く続いたりする痛みの信号はかえってストレスとなり、身体の回復を遅らせてしまう可能性があります。
そういったことを防ぐ意味で、痛めてすぐの炎症が強い時や、直りが遅く痛みが長引いている時などは、使われることをお勧めしています。
「なぜ痛むか」と「なぜ痛みが止まるか」
ひとえに「痛み止め」と言っても、その効き方は成分によって様々です。
炎症を抑えることによって痛みを抑える成分や、痛みの伝わりをブロックすることで痛みを抑える成分など、体に色々な作用を与えることで、結果として痛みが緩和します。
また、痛みが出る原因というのも様々で、炎症が起きていたり、圧迫などの刺激(機械刺激)を受けていたり、患部の血行が悪くなっていたり(虚血)と、原因が多岐にわたります。
先にほぼ結論を言ってしまいましたが、この痛みが出ている原因と、薬の痛みを抑える成分が一致していなければ「痛み止めを飲んでも痛みがなくならない」ということが起きます。
では次は、痛みの原因と鎮痛作用、それぞれを具体的に解説していきましょう。
痛みの機序
まずは痛みの機序。何がどうなって痛みを感じるのかという内容です。
それは
- 痛みの刺激を受ける
- 脳が痛みを認識する
- 過剰な痛みを抑える
という、痛みを伝える経路と、過剰な痛みを抑える経路に分かれています。
処方される薬によって、この①~③のどこに作用するのかが変わるんですね。
また、①の痛み刺激の受け方にはいくつか種類があります
大きく分けると、「痛みの刺激を受ける」以外にも「神経などの病変」や「心理的な痛み」なども入るのですが、それは個人で使う薬の範疇を超えているので、今回は割愛します。
痛み刺激の種類です。人の感じる痛みの大部分は以下の3つに分かれます
- 機械刺激(圧迫や引っ張り、ねじれなど)例)体をぶつけた痛み
- 化学刺激(発痛物質やイオン濃度)例)炎症の痛み、血行不良の痛み
- 温度刺激 例)熱さ、冷たさの痛み
鋭い人ならもうお気づきかもしれません。この種類こそが、薬が効くか効かないかに大きく関係してきます。例えば、抗炎症作用のある薬を飲んでも、足をぶつけたら痛いですよね。
つまり、ぶつけた痛み(機械刺激が原因の痛み)に対して薬は効いていないことになります。
しかし、ぶつけた後の腫れがひどく痛む場合は、炎症が痛みの原因なので、同じ薬を飲んでも効く可能性があります。
次の項では、薬の具体的な効果と適した状態をご紹介していきますね。
補足『じゃぁ、頭痛の時は?』
頭痛の時にも痛み止めを飲まれる方は多いと思います。
しかし、頭痛というのは筋緊張による引っ張りや、自律神経失調による血圧調整、眼精疲労による血行不良など原因が多岐に渡るため、飲む薬は自分で判断せずに、お医者さんで処方してもらいましょう。
それぞれの薬と効き方
参照:「疼痛医学」医学書院
今回取り上げるのは内服用のお薬です。メインとなるのは以下の3種類。
ちょっとだけ片仮名入りますが我慢してください。
- 非ステロイド性抗炎症薬=炎症を抑える
- 解熱・鎮痛薬=解熱作用、鎮痛作用がある
- オピオイド系=脳に作用し、痛みを感じなくする※日本では市販されていない
非ステロイド性抗炎症薬
有名な市販薬:ロキソニン・バファリンA・イブA錠など
文字通り、炎症を抑える薬の中で、ステロイドではないものを指します。
炎症の進行を抑え、発痛物質が作られるのをブロックする作用があります。
全く覚えなくていいですが、NSAIDs(エヌセイド)という名称で呼ばれています。
炎症が対象なので、急性期で患部が熱くなっているような痛みに有効です。
解熱・鎮痛薬(アセトアミノフェン)
有名な市販薬:カロナール・新セデス錠・ナロン錠など
こちらは痛みを抑える神経の働きを高めることで痛みを止めます。
非ステロイド性抗炎症薬と比べると、炎症を抑える効果はかなり低いですが、胃腸障害などの副作用が出にくいのが特徴です。
炎症を抑えることはできませんが、鎮痛作用があるため筋肉の痛み(急性以外)や頭痛・口腔顔面痛に対して有効とされています。また、体温調節中枢に働きかけ、血管や汗腺を広げて放熱し、解熱を促します。
オピオイド系
モルヒネなどの脳や脊髄に直接作用し、強力な鎮痛作用を得られます。主に癌による痛みに使われますが、薬物依存の関係でコントロールが非常に難しいので、必ず医師の監視下で使います。正しく使えば、患者さんの闘病を助ける良い薬です。
但し、海外では市販薬に含まれているものもありますので、渡航時や、とにかく強力に効く鎮痛薬を…などという考えで個人輸入するなどして使用しないようにしてください。
補足「消炎と解熱は別物」
ちょっとややこしいのですが、消炎とは炎症を抑えるもの。解熱とは体温を下げることです。炎症は身体を修復するための治癒行程であり、発熱は感染時などに免疫を活性化するために体温を上げる現象です
ワクチンの副反応に効くのはどっち?
ではこれまでのおさらいと併せて、新型コロナワクチンの副反応についてです。
同ワクチンの副反応として主なものは、厚生労働省の発表によると表の通りです。
メディアで話題になった薬は
- ロキソニン(抗炎症薬)
- カロナール(解熱鎮痛)
のどちらもという感じでした。
なんとなく、ロキソニンの方が効きそうだけど副作用が気になる人はカロナール、という選び方だったのではないでしょうか。
自分で接種してみた感じや、患者さんの容態を聞いていると、接種部の痛みや頭痛の原因は
ワクチンに対する炎症であったと考えています。炎症により接種部や全身(特に肩~首)のリンパ節が腫れてしまい、その先のリンパで圧力が高まって痛みが出る、という感じでした。
くどくど書きましたが、ロキソニンはアレルギー自体を抑えることで症状を抑え、カロナールはアレルギーで起きた症状に対して解熱、鎮痛を行うとなりますね。つまりどちらも効く。
成分も作用も異なるので、併用という選択肢もあるそうです。こうしてみると、アレルギー反応をロキソニンで抑えながら、抑えきれなかった痛みと熱をカロナールで対処する、というのは良いコンボかもしれません。調べても特に副作用による弊害はなさそうなので、個人的にも3回目の接種に向けて前向きに考えてみようかなと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。痛みには炎症、外力、温度や神経損傷に心因的要素など色々な要因があり、薬というのはそのどれかを狙って作用させるため、痛みの原因と薬の作用が一致しないと効果は出ない、ということでした。ただし、薬の効き方は体質や症状の強さなどによっても当然変わりますので、その点はご注意ください。
「痛み止め」とは言っても、ゲームの魔法みたく単純にはいかないですね(つ ..)φメモメモ
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