養生のススメ ビヨンド vol.2
江戸時代の文筆家 貝原益軒 の著書 「養生訓」 の内容の中での、自然治療の思想を基本とした自主的健康管理法を、幾つかご紹介いたしましょう。養生法や、それに沿った日常の過ごし方は現代社会にも応用できる、優れたものであります。
長命と短命の分かれ道
一時の欲を我慢しないで病気になってしまい、百年持てる体を壊してしまう。愚かなことだ。長生きしていつまでも安楽でありたいと思ったら、欲に任せてはならぬ。飲食を少なくし、病気を助長するものを食べず、色欲を慎み、精気を惜しみ、深く怒りや、哀しみ、憂い、思い込み等の感情に振り回されないように過ごしていく。心を平静にして気を和らげ、口数を少なくし、無用のことを省き、風・寒・暑・湿の外邪を防ぎ、また寝てばかりいないで、時々体を動かし、歩行し、食べたものの消化の循環を良くする。欲をこらえるのは長命のもとである。欲に任せるか、我慢するかが長命と短命との分かれ道である。
中を守る
養生の道は中を守るがよい。中を守るというのは、過不足のないのをいう。食事は空腹を無くすだけでやめておくがよい。食べ放題になってはならぬ。これが中を守ることである。
全てのことは、十のうち十までよくなろうとすると、心の負担になって楽しみがない。不幸もここから起こる。また他人が自分にとって十のうち十までよくあって欲しいと思うと、他人の不足を怒り咎めるから、心の負担となる。

つまり基本的に多くを望まず、そこそこ程度で上出来だと常に心で身構えておく。これも自分の気を養う工夫との事です。
忍の一字
「忍は身の宝なり」という言葉があるが、忍とは堪えることで、欲を制することである。忍べば不幸がなく、忍ばねば不幸がある。怒りと欲とは忍ばねばならぬ。一時の浮気をし放題にすると、一生の持病になる。大不幸は、ほんのわずかの間我慢しないことから起こる。

今も三百年前も、人の世は変わらず。昨今の世の中を騒がす話題と同じことの繰り返しという事が伺えますね(笑)
徳を養い心を楽しませる
心を平静にし、気を和やかにし、口数を少なくし、静かにものを言う。これが徳を養い身体を養うことだ。口数が多いのと、心が動揺し気が荒いのは徳をそこない、身体をそこなう。ひとり家にいて、静かに日を送り、古書を読み、古人の詩を吟じ、香をたき、山水を眺め、月花を観賞し、草木を愛し、四季の移り変わりを楽しみ、酒はほろ酔い加減に飲み、庭の畑にできた野菜を膳にのぼすのも、みな心を楽しませ気を養う手段である。貧賤な人も、道を楽しんで毎日を暮せば大きな幸福である。そうなると一日を過ごす間も、その時間が長く感じられ、楽しみも多い。春夏秋冬の季節季節の楽しみを知っていれば、富貴ではあるが楽しみを知らない人に勝り、このようにして年を多く重ねていけば、その楽しみは長く、その効果は長命となって現れるであろう。

現代社会では野菜を作る庭を持つことは中々大変なことではありますが、コロナ時代を生きていく中、沢山のヒントが含まれている一節ですね。素晴らしい!
からだを動かす
中国後漢末期の名医 華陀いわく「人の身は労働すべし、労働すれば穀気(体内に入った穀物の養分)消えて血脈流通す」とある。人間の身体は、欲を少なくし、時々運動し、手足を働かせ、歩いて一箇所に長く座っていないようにすれば、気血は循環して滞らない。
そして「呂氏春秋」という古い書物によれば「流水腐らず、戸枢(こすう)むしばまざるは、動けばなり。形気もまた然り」といっている。意味は、流れる水は腐らず、たまり水は腐る。開き戸の軸の下の枢(くるると読む。戸を回転させて開閉するための穴)は虫が食わない。この二つの物はいつも動いているから禍(わざわい)がない。人の身体もまたこれと同じだ。

流石、古の人の言う事は核心をついてます。有難いお言葉ですね。
ではまたいつか、養生のススメ 続きをお話出来ることを願います!
引用 貝原益軒 著 松田道夫 訳 「養生訓」(中公文庫)より